リポート

第3回アジア空道選手権大会 リポート

文 全日本空道連盟広報部
写真 牧野壮樹・朝岡秀樹

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[総評]

3回目にして初の日本開催となったアジア選手権。最終的にモルジブ、インドネシア、カザフスタン、スリランカ、タイ、モンゴル、シンガポール、インド、韓国、ニュージーランド、オーストラリア、キルギスタン、アゼルバイジャンと、海外13ヶ国からやってきた37人の選手を各クラス2~9名の日本人選手が迎え撃つかたちとなった。2001年開催の第1回世界選手権の参加国数が21であったことを考えれば、もはやアジアだけで、その当時の競技普及度に近づいているとも捉えられよう。一方、1年後の世界選手権に向けては、空道母国日本として、安心も生まれ、不安も残る結果となった。安心したのは、清水亮汰を筆頭に、加藤和徳、目黒雄太、谷井翔太、中村知大…といった前回世界選手権出場選手たちが、さらなる成長をみせたこと。巻礼史、伊藤新太、近田充といった前回の世界選手権への出場をギリギリで逃した面々の上位進出にも、懸ける思いを感じた。また、U19のカテゴリーから昇格して間もない世代にも、来春の全日本体力別選手権(世界選手権最終選考大会)で、日本代表に滑り込んできそうな勢いがあった。対して、不安を感じたのは、なんといっても、重量2階級の内容。-270クラスのエース格・岩﨑大河はリーグ戦のなかで対外国人2戦2敗。+270の野村幸汰は、優勝を果たしたとはいえ、その試合ぶりには粗が目立ち、世界の頂点に立つロシアをはじめとする旧ソ連圏の選手に打撃に対応できるのか、疑問が残った。

[試合ダイジェスト]

男子-230

今春の全日本体力別でV3を果たし、空道軽量級における盤石の地位を築きつつある目黒雄太(大道塾長岡支部)。小川英樹のもつ全日本体力別連続優勝記録V7(1993年~97年まで-230クラス連続優勝、1996年~97年は-240クラス連続優勝)を塗り替えるのも夢ではないと思われるが…。今回、半年前に一本勝ちした谷井翔太(大道塾横須賀支部)にリベンジされ、アジアの頂点を逃した。実は目黒と谷井は過去、4度対戦して2勝2敗のイーブンで、今回の結果により、谷井が一歩勝ち越したかたち。ライバルがいてこそ、選手は強くなる。前回世界選手権の-230クラス王者・中村知大(大道塾御茶ノ水支部)も、半年後の全日本では-230クラスに出場する可能性が高い(今回のアジア選手権では-240クラスに出場=後述)というから、この包囲網をくぐって、新記録達成への道を切り開けるか? 期待したい。

決勝。本戦残り13秒、左ストレートで効果を得た谷井(白)に対し、目黒は前回、谷井を失神させた右ハイキックを中心に攻め立てるが、谷井は左のガードを固め、凌ぎ切った。延長旗判定5‐0で谷井の勝利。

準決勝、今年のワールドカップの準優勝者であり、今回、日本人2名を下して準決勝進出を果たしたルスタン・ヤーマノフ(カザフスタン・白)をミドルキック、ハイキックで寄せつけず、目黒が本戦旗判定5‐0勝利。

準決勝、谷井(青)vs近田(大道塾多賀城支部)は、上段膝蹴りで有効を奪った谷井が勝利

2回戦、目黒は、木村真拓(大道塾早稲田大学準支部・白)からパンチで効果2つを奪い圧勝。両者は半年前の全日本体力別でも対戦し、その際は、目黒の金的蹴りにより木村が試合続行不可能となり、木村が勝利していた。木村のトーナメント棄権により、代わりにその後のトーナメントを闘った目黒が優勝していただけに、きっちりと“恩返し”をした内容となった。

2回戦、谷井vs菊地逸斗(大道塾仙南支部・白)。18歳にして日本代表に選出された、元U19全日本王者・菊地に対し、谷井は投げからのキメ突きで効果をゲット。手堅く旗判定を制した。

2回戦、35歳のベテラン、近田充が21歳の高垣友輝(大道塾日進支部・白)の攻めをのらりくらりと躱すと、次第に高垣の手数が減り、タイムアップ。要所で攻撃をヒットさせていた近田が本戦旗判定5-0で完勝した。近田の熟練の組手がホープを丸め込んだ“らしい試合”。

2回戦、ヤーマノフvs荒井壱成(大道塾長岡支部・青)。20歳のホープ、荒井はジュニア出身らしく蹴り技中心に攻めるが、ヤーマノフのパンチの圧力に屈す。

1回戦、谷井vs小芝裕也(大道塾関西本部・白)。全日本無差別ベスト8の経歴をもつ小芝と谷井の対戦は、両者がコート内を縦横無尽に動き回る、両者のスタイルならではの展開に。ポイントなきまま本戦5-0で谷井が勝利。

男子-240

11年前、2006年のこの階級の全日本準優勝者である巻礼史(大道塾筑紫野支部)は初戦でインドネシアの選手に腕十字で一本勝ちすると、2回戦で昨年のこの階級の全日本王者・田中洋輔(大道塾御茶ノ水支部)の脛を折り、準決勝では、一昨年のこの階級の全日本決勝で敗れた相手である川下義人(大道塾日進支部)へのリベンジ達成。破竹の勢いで決勝進出を果たしたが、前回(2014)世界選手権の-230クラス王者である中村知大(大道塾御茶ノ水支部)には、有効2つ(いずれも右フック)、効果1つ(投げからのキメ突き)の大差をつけられて敗退した。しかし、世界選手権以来の復帰戦でいきなり階級を上げて優勝を果たした中村が華々しい試合ぶりだったかといえば、そうでもない。2回戦・服部昌洸(大道塾横浜北支部)戦では、グラウンド状態で、効果を奪われてもおかしくないほど下から顔面を蹴り上げられつつ、旗の割れる判定で勝利。準決勝、今年のこの階級の全日本王者・神代雄太(大道塾吉祥寺支部)戦は、本戦は相手に旗3本を奪われながら、かろうじて延長に持ち込み、マウントパンチで奪った効果1のリードを“投げ逃げ”とも捉えられかねない崩れた投げの連発で死守したに過ぎない。その中村が、次回世界選手権を見据えて、半年後の全日本体力別では階級を-230に戻す可能性が高いというから、世界選手権での日本代表を巡る争いは、神代、田中、川下、巻、服部が横一直線といってもよいだろう。

決勝。右利きサウスポーである中村(青)は右フックでダウンを奪う。中村は全日本選手権で1度も優勝したことがないにもかかわらず、世界とアジアを制すという記録を達成した。

準決勝、本戦・延長を通じてイニシアチブを握っていたのは神代(青)だったが、中村がワンチャンスを逃さず、効果を奪取。上写真のとおり、タックルでテイクダウンを奪い、マウントから変形の腕がらみ、マウントパンチから、相手の腕を足で抑えての絞め…と怒涛のような攻撃を繰り出した。その後は、神代の組んでの膝蹴りに苦しむも、体落をはじめとする投げを放つことで首相撲から逃れる。暗闇に光の射す針孔程度の隙間がみえたら、瞬時にそれを両手でガッと開いて脱出してしまう……そんな集中力、執念があったからこそ、中村は世界王者になり得たのだろう。なお、神代は、グラウンド状態の相手に対する蹴りの直接打撃により、反則を取られたが「寝技の攻防から先に立ち上がった者は、寝姿勢の相手に対し上肢による直接打撃を行ってよい(下肢による直接打撃は不可)」というルールと「タックルにくる相手に対し、上肢・下肢双方による直接打撃を行ってよい」というルールのどちらにあてはめるべき状況だったのか、あるいはルール自体に無理がないか、試合映像で検証すべきと感じた。

準決勝、巻が川下に本戦5-0で勝利。一昨年の全日本-240クラス決勝では川下が巻に完勝していたが、試合後のインタビューで巻は“2回戦で対戦相手(能登谷佳樹)の脛を折ってしまったことでショックを受け、試合が怖くなってしまった」”と告白していた。奇しくも、今回、川下戦の前にも再び対戦相手(田中洋輔)の脛を折っていたが、経験を通じて動じない心が養われていたのだろう。

2回戦、中村vs服部(青)。服部はハイキックで中村を脅かし、投げられて下になっても、蹴り上げで中村の顔面を捕らえる。流れが服部に傾くなかで、綺麗に相手を投げ、印象点を一気に取り戻す中村の勝負強さが本戦旗判定4-1の結果を招いた。

2回戦、本戦1分23秒、サウスポーの巻(白)の左ローキックと、オーソドックスの田中洋輔の右ローキックが同時に放たれ、両者の想定外のタイミング、角度で蹴り脚どうしが衝突。田中が脛骨を骨折し、試合続行不可能となった。2009年の世界選手権に出場、2014年の世界選手権はぎりぎりのラインで出場を逃し、一昨年の全日本体力別優勝以来、全日本やワールドカップで上位進出を重ね、2018年の世界選手権を目指してきた田中だが、脛骨骨折から1年内に戦線復帰できる可能性は少ないと思われる。一方の巻も、前回世界選手権、日本代表の補欠選手に選ばれながら、出場の機会が巡ってこなかった身。厳しい闘いだ。

2回戦、川下は越後暢介(大道塾仙台東支部・白)から、投げからのキメとパンチで効果を奪う。

1回戦、巻はエンディ・ウィスヌ(インドネシア)に腕十字で一本勝ち。

1回戦、神代(白)は、山野暁彦(シンガポール)から効果2つ(投げからのキメ、ヒジ打ち)を奪って完勝。

男子-250

2014世界選手権の準優勝者・清水亮汰が-260クラスに階級を上げ(2018世界選手権では-250クラスで出場する可能性が高い=後述)、2014世界選手権日本代表であった残りの3人、アレクセイ・コノネンコ、勝直光、深澤元貴、そして2014世界選手権日本代表最終選考に残っていた笹沢一有、魚津礼一らが引退や調整不良等で、出場していないこの階級。2014年世界選手権後の全日本の決勝を争ってきた加藤智亮(誠真会館東伏見道場)、山崎順也(大道塾総本部)、藤田隆(大道塾秋田支部)が、上位を守り切った。一方で、ジュニアクラス出身、20歳の安富北斗(大道塾札幌南支部)、18歳の渡邉憲正(大道塾早稲田大学準支部)も、半年後の全日本…2018世界選手権日本代表最終選考大会では、“上”を追い越しかねないほどの勢いをみせている。

決勝。過去、1勝1敗で手の内を知り尽くした加藤(青)と山崎。左右のミドルキック、ハイキックと組んでのヒザ・ヒザで軸のブレない攻撃を仕掛ける加藤に対し、山崎はダッキングでハイキックを躱すなど、セオリーを覆す対応。タックル、下からの寝技、後ろ蹴り…と加藤のリズムを崩す戦略で、延長戦でパンチによる効果1をゲットした。

準決勝。加藤(青)vs藤田は、2015年のこの階級の全日本決勝と同じ組み合わせ。その際、藤田が先にパンチで効果ポイントを得て、その後、加藤が首相撲からのヒザを中心とした攻撃で逆転し、セーム・シュルト以来の大道塾外の北斗旗王者となったが、今回も同じ展開に。本戦20秒で藤田が右ストレートで効果を奪うが、1分30秒を過ぎる頃には、加藤の首相撲に捕まり、脱出できず。加藤が膝蹴りで効果を2つ奪い、前回の対戦同様、逆転勝利を決めた。藤田には日本拳法仕込みのストレートのタイミングのよさがあるが、それ一辺倒でなく、トータル的に技術の欠けている部分を埋めねば、今後もその穴を突かれることになるだろう。

準決勝。21歳・紋別出身の山崎(青)と20歳・札幌出身の安富は、ジュニア時代から鎬を削ってきた間柄。本戦は旗が2本山崎に、1本が安富に挙がる互角の展開だったが、延長で地力の差が出た。集中力の切れはじめた安富に対し、山崎は組みついての上段回し蹴り、パンチでそれぞれ効果を奪取。

2回戦。加藤(青)vs渡邉は、本戦、加藤が旗3本を得る。主審・副主審が引き分けを支持するも、延長で加藤が首相撲からのヒザ蹴りの連打で効果を2つ奪い、明白な差を証明した。ジュニア出身で柔道も並行して取り組んできた渡邉だが、首相撲に穴があった。10月の予選でも渡邉と対戦していた加藤は、そのウィークポイントを逃さず攻めた。

2回戦、山崎(青)が伊藤駿(大道塾仙台東支部)からニーインベリーからのキメ突きで効果を奪う。

2回戦、安富(青)vsカンガイ・セセグマ(モンゴル)。本戦旗判定5‐0で安富が圧倒。

1回戦。伊藤(青)はベン・トンプソン(オーストラリア)を組み伏せ、マウントパンチで効果2つを奪う。オーストラリア勢は、総じて、打撃が巧く、一方で組むと途端に劣勢になっていた。こういったトータルファイター化していないチームの個性が感じられるのも、国際大会の面白さではある。

1回戦。ジュン・ヘオン・リー(韓国、青)のレバーを左ボディアッパーで抉る安富。この後、レバーを膝蹴りで追撃し、一本を奪った。

男子-260

全日本選手権において破竹の快進撃を続けながら、ワールドカップや前回アジア選手権などでは成績を残せていなかった清水亮汰(大道塾総本部)が初めて国際大会で優勝……という結果だが、実は、辻野浩平(大道塾岸和田支部)と加藤和徳(大道塾吉祥寺支部)が海外勢の上位進出を阻んで清水と対戦したため、清水と海外勢の対戦はなかった。とりあえずは、日本のチームとしての盤石さを喜んでおくべきか。しかし、清水が今後、2018世界選手権に向け本来のー250クラスに階級を下げる可能性が高いことを念頭におくと、加藤、辻野と、今回フィ・ギュ・キム(韓国)に敗れた押木英慶(大道塾新潟支部)らで、あのロシア勢に太刀打ちできるのか、途端に不安にも感じる。

決勝、初めての対戦となった清水(青)vs加藤は、両者ポイントがないまま、本戦・延長が終了。しかし、全般的に清水が攻める場面が目立ち、副審3名は青旗を挙げた。副主審は旗をクロスするも、主審は、清水勝利の裁定を下した。

準決勝、清水(青)vs伊藤新太(大道塾日清支部)。ポイントこそ入らなかったものの、頭突き→投げ→キメ突きなどで清水が攻勢のまま本戦で旗判定5‐0勝利。半年前の全日本体力別決勝でも清水に完敗している伊藤、前回世界選手権での日本代表選出をギリギリで逃してからここまで這い上がってきたが、海外勢のパワーに対抗するには、何か“もうひとつ”武器が欲しいところだ。

準決勝、加藤(青)vsキム。加藤が、MMAファイターとしても活躍するキムから右フックで一つ、膝蹴りで一つ有効を奪い本戦決着。

2回戦、前回世界選手権‐270クラス日本代表の辻野(白)と、同-250日本代表の清水の闘い。清水は、辻野の主力武器である右ストレートをひょいひょいと躱しては、本来2階級差あるにもかかわらず豪快に投げ捨てる。投げからのキメ突きで1回、マウントパンチで2回、効果を取り、清水が本戦勝利。

2回戦、渡部秀一(大道塾岸和田支部・青)vs伊藤。両者ポイントはなかったものの、本戦旗判定3-0(主審・副審が引き分けを支持)、延長旗判定5-0で伊藤が完勝。渡部は“立って組んだ状態で仕掛け、引き込んで極める絞め技”という一発芸をもつが、この戦法の対応策を練ってきている相手に対しては、打撃で拮抗できず判定負けを喫してしまう。有力な外国人選手から一本を奪う可能性も秘めているだけに、むしろ国際大会向きなのだが…。手の内を知り尽くした者同士の闘いとなる国内での代表争いが鬼門だ。

2回戦、加藤vs望月(大道塾総本部・白)。左右のストレートの当て勘の良さが持ち味の望月に対し、加藤は投げ→キメ突きで効果を奪い本戦で決着をつける。

2回戦、押木(青)vsキム。本戦で、パンチで一つ、投げからのキメ突きで一つ効果を奪われ、押木が完敗。2015~2016と2年連続全日本無差別ベスト4に入りながら、今回のアジア選手権、予選では望月に敗れ、今回もこの結果。安定感が欲しいところだ。

男子‐270

この階級の日本のエース選手である加藤久輝(大道塾安城同好会)は、ケガが癒えず今大会への出場が叶わず。2018世界選手権日本代表の選考条件である“2017全日本体力別、第3回アジア大会予選もしくは第3回アジア大会本戦、2018年全日本体力別の3つのうち2つ以上に出場”を満たせないことが確定したため、現時点で日本代表に選出されないことが確定してしまった。そんな状況下、この春の全日本+260クラスで野村幸汰(大道塾札幌西支部)を下し、19歳にして空道最重量級の全日本王者となった岩崎大河(大道塾総本部)が、今大会、4名によるリーグ戦で対外国人2戦2敗。1年後に向け、暗雲たちこめる結果となった。岩﨑は「筋肉量の違いを感じたので、身体を鍛えて軸を強くして、世界選手権では勝ちにいきます」と気を引き締めていた。

岩﨑(白)vsイン・チョル・リー(韓国)。本戦1分10秒、リーが右後ろ回し蹴りによる有効を得て、その後の岩﨑の猛攻を凌ぎ切り、勝利。「『効果なら取り返せるけど、有効取られたら、一本を取るしかないな』とあせってしまった」と岩﨑は振り返る。

岩﨑(青)vsバイラン・ゴザロフ(アゼルバイジャン)。ゴザレフがマウントパンチで効果1を先取。グラウンドで上を取り返した岩﨑がポイントを取り返そうとインサイドガードからの突っ込み絞めを狙ったのに対し、ゴザレフは定石通りのカウンター腕十字を極め、一本を奪った。

ゴザレフ(白)vs伊藤征章(大道塾総本部)。右利きながらサウスポースタイルで構えるゴザレフが右フックでダウン(有効1)を奪い、本戦勝利。

ゴザレフ(白)vsリー。本戦でゴザレフが左ストレートで効果を奪い、勝利。4人よるリーグ戦で、ゴザレフが3戦3勝となり、優勝が決まった。ちなみに、2017ワールドカップでは準優勝だったが、それは決勝に進出しながら、ケガにより棄権したことによる結果(優勝者はタジキスタンの選手)だった。アゼルバイジャンは旧ソ連圏だが、サンボの経験はなく、空道をメインに修行しながら、アマチュアボクシングやブラジリアン柔術(青帯)にも取り組んでいるというゴザレフは、首都バクーで法律を学ぶ大学生。日本の選手同様、社会体育を実践しつつ「世界選手権で勝てない相手はいない。狙うのは優勝のみ」と高い志をもつ。

岩﨑(青)vs伊藤。両者ポイントなく、本戦で岩﨑に3本旗が挙がり主審・副主審が引き分けを支持、延長で旗判定5-0で岩﨑が勝利。

男子+270

野村幸汰(大道塾札幌西支部)が日本人二人、モンゴル人ひとりと対戦し、3戦3勝すべて一本勝ちで大会MVPを獲得。一本は関節技のみならず、膝蹴りでも得ているうえ、パンチでの効果も複数奪っているので、空道の選手として、一歩一歩、完成に近づいていることは確かだろう。だが、この日の闘い方で、アジアの大会でなく、旧ソ連圏の選手と対戦する国際大会(世界選手権、ワールドカップ)に挑んだ場合どうなるのか? を考えると、まだまだ不足があると言わざるを得ない。打撃の攻撃力に関しては間違いなくアップしているのだが、課題は、攻撃を放っているときのガードの甘さと、相手の攻撃に対する反応。現状の打撃スタイルのまま、ソ連圏の選手の攻撃を喰らいながら打ち返す展開を演じてしまっては、2014世界選手権でバッタリと倒れ一本を奪われた、あの屈辱を再び味わうこととなろう。今後1年のさらなる技術的成長に期待したい。

決勝。野村(青)vsガダル・スカバートル(モンゴル)。投げ→ニーオンベリーからのキメ突きのパターンで効果を2つ奪った野村は、マウントからの十字絞めでタップを奪い損ねるも、腕がらみ(いわゆるⅤ1アームロック)で本戦フィニッシュ。

女子-220

4名によるリーグ戦、今春の全日本体力別で軽量級(-215クラス)を制した大倉萌(大道塾吉祥寺支部)が優勝候補筆頭であったが、伏兵ともいえる作田千代美(大道塾草加支部)に、本戦旗判定で旗が双方に2本ずつ、延長旗判定でも旗が双方に2本ずつ挙がる接戦の末、敗退。その作田は19歳の新鋭・小柳茉生(大道塾新潟支部)に、小柳は大倉に敗れる大混戦。リーグ戦参加のもう一人の選手、3戦3敗したプラティブハ・ラソレ(インド)に対し、大倉が4ポイント獲得、小柳0ポイント(旗判定5‐0)での勝利であったのに対し、作田は8ポイント(腕十字での一本勝ち)を得ていたため、作田の優勝となった。格闘技の経験がまったくないまま社会人(学校給食を作る職務)になってから空道をはじめた作田が世界選手権出場に王手を掛けたことは、多くの人に希望を与えるだろう。

大倉(白)vs作田。大倉の打撃を凌いだ作田は、グラウンドにおいて優勢な展開をみせた。打撃での若干の大倉の攻勢を取るか、打撃を互角とみなして組んでからの作田のイニシアチブに重きをおくか、旗が割れてしかるべき内容であった。

大倉(白)vsラソレ。大倉がパンチで効果2つを奪う。

作田(白)vsラソレ。マウントパンチで効果を奪った作田は、腕十字で一本勝ち。

作田(白)vs小柳。両者ポイントなく、本戦旗判定で副審3名が青旗を挙げ、副主審は旗をクロスしたが、主審は小柳勝利を支持した。

大倉(白)vs小柳。掴みにくる相手に対し、縦ヒジを極めるなどテクニシャンぶりを発揮する大倉に対し、小柳も得意の右上段横蹴りをヒットさせるが、大倉がニーインベリーからのキメ突きで効果を奪取。

謎の色帯を巻き、開会式では高らかに選手宣誓を行ったにもかかわらず、いくら呼んでも試合コートに現れないという宮本武蔵ばりの戦法を駆使したラソレだが、結果的に、彼女の闘いぶりが優勝者を決めたかたちに……。

女子220+

大谷美結(大道塾札幌西支部)が全日本とワールドカップとアジア合わせて、6大会連続優勝を達成。大谷に次ぐ位置にいる今野杏夏(大道塾多賀城支部)も、今回も大谷へのリベンジはならなかったとはいえ、打撃のキレがよく、停滞しているわけではないことを感じさせた。

大谷(青)vs今野。大谷は、打撃を放ちつつ、今野の反撃に対しては、きっちりとタイガードで凌ぎ、組み技に繋ぐ。延長戦、マウントパンチで効果1を得て、旗判定4‐0勝利。

大谷(青)vsサーシャ・カサブ(オーストラリア)。打撃の冴えるカサブだが、組むと経験のなさを露呈。腕十字で一本を献上。

大谷vs吉倉千秋(大道塾横浜北支部、白)。ハイキックなども巧みに使いこなした大谷が、マウントパンチで一つ、投げ→キメ突きで一つ効果を奪い、本戦で完勝。

3戦3敗で終わったカサブだが、18歳にして極真空手11年のキャリアを持ち、打撃には力強さをみせた。組み技の能力が向上すれば、怖い存在になるかも。

雑感

入賞者。左から作田、大谷、谷井、目黒、近田、中村、巻、神代、高橋英明・国際空道連盟副理事長、東孝・国際空道連盟理事長、東恵子・国際空道連盟事務局長、山崎、加藤(智)、安富、清水、加藤(和)、リー、ゴザロフ、野村。